噛み合わせ(咬合)について

咬合とは、下あごを上あごに向かって閉じてくる行為をさす場合と、上下の歯の接触関係をさす場合とがあります。皆さんが「かみ合わせ」という言葉 からイメージするのは、後者、すなわち上下の歯の接触関係ではないでしょうか。
ヒトの場合、上あごは頭蓋骨に固定されていて、下あごは主に複数の筋肉に よって頭蓋骨から釣り下がっています。これらの筋肉が収縮あるいは弛緩する ことで、顎関節(がくかんせつ)を中心にして、下のあごが動きます。すなわち咬合には、歯、筋肉、顎関節および中枢神経系が関与しますので、そのうちのどれか一つに問題が生じても咬合(かみ合わせ)に問題が生じます。特にヒトの顎関節は回転運動の他に前後左右にも動くことができ、複雑な機構でトラブルが生じやすい環境にあります。
咬み合わせの乱れが引き起こしうる問題
噛み合わせの乱れで起こる問題は多々存在しますが、端的に代表的なものを挙げると、
- 咀嚼能力や発音能力の低下
- 口元や顔貌ないしは姿勢の歪み
- 虫歯リスク
- 歯周病リスク
- 全身疾患リスク
- 認知症リスク
があります。これらの問題は審美的なものを除けば、すぐにみなさんへ自覚的な悪影響を及ぼすものではないというところも厄介なポイントです。年月をかけて少しずつ口腔内ないしは全身へ悪影響を及ぼしてくることが考えられます。

例1:歯並びがガタガタで左右非対称の噛み合わせを持っている
→顔貌や身体の骨格が歪み、局所的に噛み合わせが強く当たる所からダメージを受ける。

例2:前歯が噛み合っていない
→奥歯ばかりに咬合負担が偏り、早期に歯を失ったり顎関節症を患ったりする。
咬み合わせの乱れの原因
先天的なもの(遺伝性)
骨格や歯のサイズ、形態、先天的な歯の欠損など本人のポテンシャルによる要因も挙げられます。家族歴からある程度考慮することができます。(例:親が出っ歯なら子供も出っ歯になる可能性が高い)
後天的なもの(習慣性、環境性)
- 舌のポジションが悪い
- 頬杖をつく
- 口腔周囲の筋肉(頬の筋肉や唇の筋肉)の過緊張、弛緩
- 口呼吸
- 就寝時の姿勢
- 片噛み
- 親知らずの影響
- 虫歯や歯周病の放置
- 抜歯した欠損歯の放置
咬み合わせの治療
噛み合わせの治療は難しいものである可能性が高いです。なぜならばそうなった原因を特定することと、本人の許容性を含めた性質を併せて診断する必要があるからです。
例えば、歯並びが多少ガタついていてもずっと健康に保てる方もいれば、矯正してきれいな歯並びになったのにも関わらず顎関節症になったりする人もいます。

冒頭で述べたように咬合とは歯・筋肉・顎関節ひいては全身も含め成り立っているため、これらを総合的に判断し治療が必要か否か、診断していく必要があります。そして病的なものであると判断した場合の治療手段に関しては以下のものが挙げられます。
小児
- 筋機能矯正
- 生活習慣の改善
- 口腔習癖の改善
- マウスピース矯正、ワイヤー矯正、保隙
成人
- 口腔習癖の改善
- 就寝時用マウスピースの作製
- マウスピース矯正、ワイヤー矯正
- 補綴治療
そもそも治療というものは、想定される期待値がその治療リスクを上回るものと判断した上で、皆様の合意を得てから行われるものです。噛み合わせの治療は単純に済まないものも多いため、より一層インフォームドコンセントが大切になってきます。
当院では患者様の人生のステージにも寄り添いながら、適切なタイミングや方法について、柔軟に対応できるように心がけています。